藤娘きぬたやは、愛知県名古屋市にある総絞りの着物を製造しているメーカーです。
時を越え愛された「京絞り」をルーツに、受け継がれた伝統を大切にしながらも独自の進化を遂げたきぬたやの総絞りは、世界でも高い評価を受けています。
元々、きぬたやの作品は最高級品として全国に名を馳せていましたが、2016年卓球の福原愛さんが結婚会見できぬたやの総絞り振袖を着用された事から、更に人気に火がつき、当時かなり品薄状態となっておりました。
スタイリストとの繋がりで藤娘きぬたやと出会い、振袖選びではスポンサーとの兼ね合いで鶴の柄と赤色はさけピンク地で柄にブルーが入っている振袖を探されていたそうです。
藤娘きぬたやの特徴
日本最古の染色技法である「絞り染め」を普遍的な美の源流として、既存の概念にとらわれる事なく革新を求め創作活動をされています。
独自に編み出した「きぬたや絞り」ともいわれる一粒一粒丹念に絞った精緻な「絞り染め」の着物は、最高峰かつ唯一無二の技法として、他の追随を許さない圧倒的な美を誇っています。
総絞りの配色・細かさ・色彩豊かなグラデーションなど、きぬたやの高度な技術を持つ職人でしかなしえない手技の結晶といえます。
また、風の音・鳥の声・芳しい花の香り、自然の中の美しい情景を鮮やかな色彩で絞りに織り交ぜることにより、絞りは単色という概念を覆した「きぬたやカラー」は絞り染めの世界に新境地を開きました。
京鹿の子絞り
「鹿の子」とは、絞ることでできた四角い模様が子鹿の背中の模様に似ている事から名付けられました。
代表的な技法は「疋田絞(ひったしぼり)」や「一目絞(ひとめしぼり)」などで、全部で50種類以上にのぼります。
京鹿の子絞の特徴は、複雑で精巧な括り粒で表現される独特の立体感は、他の技法ではみることができません。
他の染色に比べて完成までの期間が長く、着物では1年半、振袖では2年以上かかることもあります。
疋田絞り
疋田絞りには、本疋田絞りと疋田絞りがあり、疋田絞りは通常、綿糸で4回巻きます。
木製の絞り台に専用の針を設置して、その針に布地を引っ掛け、生地を折り綿糸で4回巻きます。
4つ巻絞り、針絞りとも呼ばれています。
本疋田絞りは、絹糸で7回巻き、最後にもう一度根元で巻き、合計で8回巻きます。
道具は紙製の指ぬきを使いながら、1つずつつまみ出して巻いていきます。
疋田と本疋田の違いは、反物幅の横1列の中に、何粒絞られているかということで判断します。
1尺の反物に40粒絞られていれば40建てと呼ばれ、45粒、60粒と細かくなりごとに、熟練の技が必要となります。
粒の細かさが疋田絞りの価値を左右することになります。
巻く回数が多いほどに鹿の子の目が小さくなり、上質なものになります。
一粒ずつ絞っていく際に、巻き付ける糸の回数によって、疋田か本疋田に分かれます。
疋田絞り ː 一般的には約4回
本疋田絞り ː 8回以上
つまり、巻き付ける回数が多いほど、絞りの粒が立ち、白地が鮮明に浮き上がり、見栄えが豪華になります。
帽子絞り
帽子絞りとは、図柄の境目となる部分を縫い、ナイロンやビニールで生地を包んで糸を括り、染めない部分をつくる事で模様を出します。
一目絞り
一目絞りとは、疋田絞りと括り方は同じで、巻き絞りの事を指します。
疋田は、面の部分一面に絞りを施すのに対し、一目は小さい丸い絞りを連続して線を表現するのに用いられます。
括り用の絹糸が細く、2回巻き付けて括る事から、高度な技術が必要になります。
「染め」
色が混ざりあわないよう糊で防染する友禅染めとは異なり、絞りは糸によって防染します。
手挿しによって行われる染めは、高級ある風合いの仕上がりとなります。
藤娘きぬたやの概要
日本最古の染色技法のひとつである「絞り染め」に着目した創業者の伊藤嘉敏が、その最高峰を目指すべく持ち前の飽くなき探求心により「きぬたや絞り」を完成させました。
「誰もつくらない、誰もつくろうとしない」この、常識にとらわれない物創りの精神は今もなお受け継がれており、伝統技術を守りながらも新たな可能性を追い求め、常に挑戦を続けています。
1942年(昭和22年)創立
きぬたや二代目作家 ː 伊藤嘉秋氏
京絞りの伝統を守りつつ、独自の絞り加工技術を駆使し、絞りへの飽くなき追及を続けておられます。
不可能とされた本疋田70立(生地巾に70粒を絞る)を結実されている事から、現代における総絞りの第一人者といえるでしょう。
藤娘きぬたやの挑戦は、国内だけでなく、海外にも活躍の場を広げており、ニューヨークで1996年・1997年・2001年と3度の個展を成功させています。
その際、メトロポリタン館長の目に留まって寄贈の依頼がありましたが何度か断った後、館長の熱意にお応えし伊藤嘉秋氏の代表作「宴」がメトロポリタン美術館に永久保存されることになりました。
メトロポリタン美術館は、ニューヨーク市にある世界最大級の美術館です。
世界三大美術館に数えられ、フェルメール・ピカソ・モネ・ルノワール・ミケランジェロ・クリムトなどの作品をはじめ、アートや歴史的な遺物など幅広い美術品が展示されています。
きぬたや三代目作家 ː 安藤嘉陽氏
1977年に藤娘きぬたやに入社し、伊藤嘉秋氏に師事。
藤娘五彩とも呼ばれるきぬたや絞りの彩色を極め、「きぬたやカラー」を確立。
独創的な感覚で作り出す作品は、各界から支持されおり、三代目として新たな挑戦を続けています。
そのきぬたや絞りの全てを取り仕切る安藤嘉陽氏から、直接詳しいお話を伺く機会に恵まれました。
現在、総絞りの着物を図案の作成から絞りや染めの仕上げに至るまで社内一貫生産できるのは、全国でもきぬたやのみだそうです。
総絞り振袖1点につき約20万粒、丹念に一粒一粒絞っていく事で、美しい立体感が表現されます。
制作に要する期間は、およそ1年6ヶ月~2年という気の遠くなるような歳月を費やし完成に至る事から、大変希少性がある振袖です。
有名人の着用
2007年 天海祐希さん ドラマ「演歌の女王」
2009年 余貴美子さん 日本アカデミー賞受賞式
2010年 水川あさみさん 映画「彼岸島」舞台挨拶
2010年 斉藤慶子さん 「徹子の部屋」
2011年 桜庭ななみさん 「アニメフェスティバル」開会式
2012年 西尾由佳理さん 「のどじまんザ!ワールド」
2013年 斉藤慶子さん 「行列のできる法律相談所」
2013年 西尾由佳理さん 「のどじまんザ!ワールド」
2014年 上村愛子さん 「第11回万年筆ベストコーディネート賞」
2014年 西尾由佳理さん 「のどじまんザ!ワールド」
2016年 高梨沙羅さん 「セブンイレブン年始めイベント」
2016年 福原愛さん 結婚会見
2018年 常盤貴子さん フランス映画祭オープニングセレモニー
2018年 高梨沙羅さん きものSalon2018-19秋冬号
2018年 小平奈緒さん 「第69回NHK紅白歌合戦」
2018年 小平奈緒さん・佐藤綾乃さん・高木奈那さん・菊地彩花さん・高木美帆さん・高梨沙羅さん 春の園遊会
2018年 福原愛さん 台湾ELLE Style Awards 2018
2019年 荻野由佳さん JUNON3月号
藤娘きぬたやの総絞り振袖
まとめ
世界中から注目されるブランド『藤娘きぬたや』
絞りの音を感じ、色彩が共鳴するきぬたや絞りは、もはや芸術品ともいえる名門の矜持を示します。
普遍的な日本の美を追及する事を使命とし、品格と物語性のある絢爛な世界観は、女性にとって大切な時間と空間を燦めきで満たしてくれます。
既存の概念にとらわれず革新を求めながらも、最高峰の技巧と美意識を目指す姿勢は、伝統的でありながら最先端でもあります。
その真価は、お召しになる方の美しさと存在感を最大限に引き出し、感動を生み出す時に発揮されるでしょう。
※ 資料画像は、藤娘きぬたやからご提供頂きました
藤娘きぬたやの総絞り振袖をご覧になりたい方は、みやたけ工房までお気軽にお問い合わせください。
みやたけ工房は、ホンモノの着物を製造する染匠を応援しています。