手描き京友禅の世界で、最高峰のひとつに数えられる京都の名門「染めの百趣 矢野」
日本の伝統的な風物を題材に、時代に媚びることのない美しさを追求する孤高の存在です。
「美しいキモノ」「きものサロン」「婦人画報」などの雑誌でも度々紹介され、全国のきものファンを魅了しています。
一度は袖を通してみたいと思われる憧れの染匠として名高い矢野の全てをご紹介いたします。
染の百趣矢野の特徴
矢野の大きな特徴としては、「東京友禅」「手糸目」「もち糊」の3つが挙げられます。
東京友禅
染の百趣矢野では、京友禅の他に東京友禅も制作しています。
東京友禅を始めるきっかけは、京都に数ある染匠の中で他がやっていない事に挑戦し、オリジナリティーを出すというシンプルな理由でしたが、今や矢野といえば東京友禅といわれるほどまでになりました。
京友禅と東京友禅の一番大きな違いは産地で、例えば加賀で制作された着物を「加賀友禅」と呼ぶように、東京で制作された着物を「東京友禅」と呼び、京友禅も含めて「日本三大友禅」と称されます。
東京友禅は、徳川家康が江戸幕府を開いた際に、大名がお抱えのキモノ職人らが京から移り住み、技術や技法が伝承され発展したといわれており、雅な模様を華やかな色使いで表現する京友禅に対して、余白部分が多いすっきりとした粋なデザインが特徴です。
現在矢野では、京友禅8割・東京友禅2割の割合で制作に励んでいます。
手糸目
手描き京友禅には、柄を染め分けるために「糸目引き」というキモノの質を左右する重要な工程があります。
糸目を引く技法は、「型糸目」と「手糸目」の2通りあり、一般的に用いられる型糸目ではなく、染の百趣矢野では「手糸目」にこだわって、着物を制作しています。
型糸目とは違って手糸目は型がないため、一点物で制作する場合が多くあります。
もち糊(真糊)
効率や採算が優先される現代では、通常「ゴム糊」を使用して糸目を引きますが、染の百趣矢野では染めがった時の深い趣や表現の優しさから、着物によってもち米から作る「もち糊(真糊ともいう)」を糸目引きで使用しています。
ゴム糊ともち糊では、制作工程の手間が全く違います
昔ながらの伝統技法である「もち糊」を使った手描き京友禅を作るには、職人の高い技術や複雑な工程が必要になるため、制作にかかる手間が段違いで、今ではもち糊を使う染匠はほとんどありません。
振袖の手描き京友禅が約1%しか制作されない現代において、更にもち糊を使った着物は大変希少といえるでしょう。
矢野では、伝統技法が途絶えないよう次世代へ繋ぎ、日本人の心に根付かせた着物を大切に守り育てていきたいという信念から、もち糊による制作を続けています。
染の百趣矢野の概要
1971年4月 京都市下京区西洞院松原上ルにて、矢野泰義より創業開始
1983年9月 現住所へ移転
1985年11月 法人設立 矢野泰義が代表取締役社長に就任
2010年8月 創業者 矢野泰義に代わり押谷武明が代表取締役社長に就任
染の百趣矢野の振袖
まとめ
古典を愛し、伝統の技を継承し、良きものを作るために、たゆまぬ努力が生み出す矢野の振袖は、文化的また歴史的な価値ある美術品といえるでしょう。
職人が労力を惜しまず手間暇かけて制作した正統派古典柄振袖は、矢野でしか表現できない唯一無二の美しさを誇っています。
手描き京友禅の重鎮「染の百趣矢野」の着物をご覧になりたい方は、みやたけ工房までお気軽にお問い合わせください。
みやたけ工房は、ホンモノの着物を製造する染匠を応援しています。