「古典柄の振袖」ってどんなイメージをお持ちですか?
古風、落ち着いてる、安心感、重厚感など、さまざまなイメージがあるかと思います。
一言で古典柄の振袖と言いましても様々な種類の振袖がございます。
総絞り、総刺繍、辻が花、加賀友禅、そして京友禅など様々な技法で制作されているものがございます。
今回は、その中でも京友禅について、ご紹介させて頂きたいと思います。
京友禅とは
京友禅(きょうゆうぜん)(友禅染ともいう)は、京都の伝統工芸品の1つで、元禄時代に扇絵師の宮崎友禅斎によって考案された染色です。
絹織物の白布に絵をかき、染め出したもので、昔は鴨川の流れでさらし、鮮やかな色彩を出していましたが、現在では地下水などが使われています。
本格的な手描き友禅の場合、完成までに26もの工程を踏む大変手間のかかるものとなり、露草(ツユクサ)の花弁から抽出した「青花」と呼ばれる色素で生地に柄の下絵を描き、ゴム糊(昔はモチ米とヌカで作った糊を使用していました。)を使い柄の輪郭に沿って糸目糊を置いていきます。
そして糸目糊で図案を囲み終わったら、挿友禅をする模様の部分に糊を置き、防染の糊を生地になじませる地入れを行い乾燥させます。
その後、引き染めやぼかしなど柄以外の部分を染色して、乾燥後に高温の水蒸気で染料を布地に定着させる蒸しの作業を行ないます。
それから防染していた糊を水で洗い流し、乾燥後に柄の部分に手描きで色を挿していきます。
色挿しが終われば、仕上げに箔などの金彩加工や金駒刺繍などを行い、仮仕立てをして京友禅の振袖として完成します。
京友禅が出来上がるまで
①企画考案
京友禅の模様の配置と色彩のバランスを考えて、図案を考案します。
仕上がりのイメージに合った生地の選択も行います。
②ゆのし
生地の長さや幅を整えるために蒸気で生地を伸ばす「下のし」を行います。
ゆのしはこの後、工程途中に中のし、上げのしの2回行いますが、生地のしわを伸ばすだけでなく、発色を促し、光沢を与える作用もあります。
③検尺(けんじゃく)・墨打ち
着物の袖、身頃など各部分を割り振るため、それぞれの長さを合わせ、生地に墨でしるしをつけます。
④仮絵羽仕立て(下絵羽)
一度、着物の形に縫い上げ、染め上がる時に縫い合わせるところの柄がずれないよう、仮縫いを行います。
⑤下絵
①で考案した図案にもとづき、仮絵羽仕立てが済んだ白生地に、青花液を使って下絵を描いていきます。
はじめは薄い青花液で描きながら、だんだん濃くして正確な図案の模様に近づけます。
下絵が終わったら仮絵羽をほどいて、各部分にわけます。
模様がゆがまないように、竹の伸子(しんし)で生地をピンと張ってから次の工程に進みます。
⑥糊置(ゴム糸目)
青花液で描いた下絵の線に沿って、糸目糊を置いていきます。
後の手挿し友禅の工程で、染料が他ににじまないようにするためです。
※この糊置きの工程では、型糸目と手糸目があり、出来上がり時の価格も変わってきます。
⑦伏糊
糸目糊で図案を囲み終わったら、挿友禅をする柄の部分を糊で伏せていきます。
糊の上に挽粉(ひきこ)をふりかけ、次の引染の工程で模様の部分が染まるのを防ぎます。
⑧引染(地染め)
他の布で試し染めをし、色合わせした染料を刷毛で染めていきます。
引き染めには「引き切り」「ぼかし染め」「段ぼかし染め」などの種類が有り、それぞれの職人の「技量」により仕上がりに差がでます。
濃い色は2、3回重ねて、色彩を鮮やかにしていきますが、色によっては難がでやすいため高度な技術が必要です。
⑨蒸し
引染が終わったら、生地を蒸し箱に入れ、約100度の蒸気で20~50分間蒸します。
色落ちなどしないように、地色を定着させるため行われる蒸しの工程は、濃い地色のものほど何度も繰り返し蒸します。
⑩水元(水洗い)
水をたくさん使い、蒸し終えた生地をきれいに洗い流します。
昔は、きれいな川で反物を流して洗うことを「友禅流し」と言われてましたが、現在では地下水をくみ上げて、人工的に長い水槽へ水を流し反物を洗います。
防染のための糊や、布に定着しなかった余分な染料を落とすために行います。
⑪挿友禅(さしゆうぜん)
筆と刷毛を使い、糸目糊で防染した模様のところに、薄い色から順番に色を挿していきます。
ぼかし模様は、刷毛を使って染めます。
終わったら、再び、蒸し→水元→ゆのし(中のし)を行ないます。
⑫金彩
金や銀の箔と粉を使い、京友禅ならではの豪華な美しさを表現していきます。
⑬刺繍
絹糸や金糸、銀糸を、さまざまな技法を使いわけて刺繍します。
模様に豪華さと立体感を出します。
京友禅にふさわしい気品のある美しい振袖の仕上げです。
⑭仮絵羽仕立て
ゆのし(上げのし)、地直しを経て全ての工程が完了です。
最後に、縫い上げて仮絵羽にし商品として完成です。
京友禅の価格の違い
京友禅が出来上がるまで、でもお伝えしましたが、製作工程の糊置きを手糸目と型糸目の二種類があり、柄の多い少ないにもよりますが、2~3倍程度、価格が違います。
また、引き染めの技量など、それぞれの工程における職人のランクによって価格が高くなるということです。
昨今、捺染ぞめといわれるいわゆるインクジェット染めは、すべてが機械化されているため、手作りの振袖を作るのと手間暇が違いますので、価格差があります。
素人目で見ても「高そうな振袖やわ~!」って思うものは、価格も正直なので本当に高かったり、またその逆もあります。
手作りの京友禅振袖とインクジェット染めの振袖を見比べれば、その差は歴然としています。
まとめ
たくさんの工程を経て、職人らの手で作られた振袖は、とても豪華なものだと思います。
そしてその魅力を感じて頂ける皆さんには、手作りで作られた京友禅の良さをわかって頂けることでしょう。
職人の高齢化や廃業、レンタルの需要増加などの理由から、しっかりとモノづくりをしているメーカーも少なくなっている時代ですが、本当に良い物をお探しの場合は、振袖がどのように作られたものなのか?を店員に聞いてみると良いでしょう。