振袖に描かれている古典柄を画像付き解説

成人式や結婚式、結納などで、独身女性が正装として着用する振袖。

日本の伝統衣装として、受け継がれてきたKIMONOの美しさや染色技法は、世界に誇れる文化財です。

キモノの中でも特に振袖は、伝統的な古典柄をはじめ、洋花のバラやカクテルなどの現代柄、大正ロマン文化を彷彿させるレトロ柄、生地がデニムの振袖、花魁風など、多種多様なバリエーションが豊富にあります。

今回は、たくさんの画像を交えながら、手描きの本格古典柄振袖を詳しく解説致しますので、ぜひご参考くださいませ。

本加賀友禅

【 本加賀友禅振袖│西野知里作‐四季の貝遊 】

加賀友禅作家「西野知里」制作の本加賀友禅振袖です。

加賀友禅作家になる為には、工房を営む師の元で7年以上修行を積み、加賀染振興協会の会員2名の推薦を得て、会員資格に相応しい技量を認められた後、はじめて落款登録がされます。

落款は、作家の誇りであり、加賀友禅作家が制作した品質の証として、本加賀友禅と呼ばれています。

本加賀友禅は、石川県の産地内でほとんどが消費される為、市場に出回ることがほぼ無い大変希少な作品です。

一般的に流通している加賀友禅は、加賀染振興協会に落款登録されていない「本加賀」とは別物といえるでしょう。

加賀友禅の歴史は、500年前の「梅染」に遡り、加賀御国染が発展し、京友禅の技法を確立させた宮崎友禅斎の友禅糊の技術を取り入れ、現在の道を歩み始めました。

加賀友禅の特徴は、「加賀五彩」と言われる臙脂・藍・黄土・草・古代紫を基調とした独特な色彩が挙げられます。

加賀友禅作家は、加賀五彩に基づき、作家自身の個性や時代の好みを反映させています。

もう一つの大きな特徴は、写実的に描かれた草花模様を中心とした絵画調の柄付けです。

柄の外側を濃く、中心を淡く染める「外ぼかし」や「虫喰い」の技法が使われ、着物に美しい自然の息吹を封じ込めています。

仕上げに金箔や絞り、刺繍など染色以外の技法をほとんど用いないことが、京友禅とは大きく異なります。

こちらの作品では、上質な別織の濱ちりめんを使用し、意匠は吉祥文様である「貝桶」をメインに、枝垂れ桜や松などの草花文様・檜扇・蛤(はまぐり)・流水など、縁起の良い古典柄によって構成されています。

貝桶に入れる貝合わせの蛤を流水文様と共に寒色系の色合いでデザインしたり、枝垂れ桜の桜が落ちる様子まで、繊細な表現で描かれています。

さらには、吉祥文様の松竹梅や有職文様の四君子(蘭・竹・菊・梅)まで、さりげなくデザインされており、巧みな図案構成は流石です。

よろしければ、松竹梅と四君子がどこに隠れているか探してみてくださいね。

京友禅久保耕

【 久保耕の振袖│手描き京友禅‐雲暈しに檜扇 】

手描き京友禅の名匠「久保耕」謹製の手描き京友禅になります。

久保耕は、京都の名門染匠が名を連ねる「京都工芸染匠協同組合」の正規会員として、「京手描友禅証紙」が貼付されます。

数ある京友禅の証紙の中で、手描きの本物だけに許される証です。

揺るぎない独創性と変わることのない美学を守りながら、品位あふれるきものを卓越した職人達が、名工たる矜持を持って制作します。

京友禅の技法は、江戸時代の扇絵師「宮崎友禅斎」によって確立され、現代まで受け継がれてきた歴史がありますが、昨今インクジェットプリンターの技術が進化して、大量生産可能なプリント振袖が振袖市場の約70%を占めています。

それに対して手描き京友禅振袖のシェアは約3%と、大変希少な存在となってきました。

こちらの作品では、上質な別織の丹後ちりめんを使用し、意匠は吉祥文様である「檜扇」をメインに桜や松の草花文様・雲取り・霞など、縁起の良い古典柄によって構成されています。

二色の赤に染め分けられた雲取りに暈し(ぼかし)染を施すことで、奥行きのある立体的な柄付けになっており、檜扇の中には牛車や橘・梅などの草花文様が、熟練職人の手によって緻密に描かれています。

高級紋綸子の白生地・発色の良い厳選した染料・手描きの染色技法と、全てにおいて妥協なしで制作される久保耕の着物は、「久美すがた」というブランドで展開しています。

久美すがたの振袖は、見た目の美しさの他に「振り口布付き」が大きな特徴として挙げられます。

振り口布は、袖無双ともいわれ、袖の内側に共布の身返しが付いており、袂や袖口からチラチラ見える奥ゆかしいオシャレです。

手描き京友禅の正統派古典柄振袖をお探しの方におすすめです。

久保耕についてもっと詳しく知りたい方は、こちらをご参考くださいませ。

『久保耕の振袖│本格手描き京友禅を名門染匠が創り出す久美すがたとは』

翠山辻が花

【 翠山の辻が花振袖│水色山水 】

辻が花の名門「翠山」謹製の辻が花振袖になります。

翠山は、前身の(株)桐屋の翠山工房の倒産を受け、元の職人達が引き継いで立ち上げた工房です。

工房の歴史は浅いですが、創業400年の九代目まで続いた翠山工房の確かな技術と辻が花に対する情熱をそのまま受け継いでいます。

翠山が本社を構える新潟県十日町は、高級絹織物の産地として京都に次ぐ規模で、十日町織物工業協同組合には、吉澤織物・滝泰・関芳・青柳など名だたる老舗染匠が加盟しており、大正時代から続く「十日町きものフェスタ」は全国の卸商社・小売店や一般消費者が一同に介するイベントとして有名です。

江戸時代に京友禅の技法が確立し、非常に複雑な工程が必要だった辻が花の技術は継承がなされないまま時代から忽然と姿を消えてしまった事から、幻の染めといわれます。

昭和52年、辻が花の色付きヒナ型図案を元に辻が花制作に取り掛かり、約1年の歳月をかけオリジナル辻が花の完成に至ります。

翠山が制作する辻が花振袖は、全行程を産地内で行うのが最大の特徴です。

熟練職人の手描きによって柄付けがされています。

室町時代のハギレにも見られる「墨ぼかし」まで忠実に再現。

絞り部分は、柄やモチーフの特徴によって、「縫い巻き上げ絞り」・「平縫い絞り」・「山折り絞り」・「縫〆絞り」・「巻き上げ絞り」の五種類を使い分けしています。

作り手の魂である落款入りです。

全ての工程に一切妥協の許さない伝統技術の結晶が、幻想的で美しい辻が花振袖を創り上げているのです。

こちらの作品は、銀通し上質な丹後ちりめんが使用し、意匠は辻が花・藤・山水文様の古典柄によって構成されています。

白地を基調に薄いブルーグレーのような藤鼠色で染め分けされた地色に、流れるように描かれ丁寧に絞られた立体感ある辻が花文様が、優雅で上品な雰囲気を漂わす逸品です。

名前の由来や加工法など、未だに謎が多い世界観も魅力の一つとして、京友禅とは違った情趣で人気があります。

翠山の辻が花振袖は、柄が細かい本格古典柄が好きな方におすすめです。

翠山についてもっと詳しく知りたい方は、こちらをご参考くださいませ。

翠山の前身である翠山工房についてご紹介させて頂いております。

『翠山工房│幻の染に魅せられて.‥夢幻辻が花│(株)桐屋とは』

まとめ

正装として、正式な場で着用する事になる振袖は、格調高い古典柄が多くの方に好まれています。

しかし、振袖市場には、現代柄と古典柄がミックスされた新古典柄振袖が多く出回っており、ホンモノの古典柄は極僅かしかお目にかかる事ができない時代となってきました。

気に入った振袖を後からよく見てみると古典柄でなく新古典柄だった.‥みたいな後悔をしない振袖選びをする為には、消費者の方でもネットにあるたくさんの画像を見て、ホンモノの古典柄を見極める目利きの習得が必要かもしれませんね。

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