成人式会場に行けば、女性の約93%が振袖を着用されていて、とても華々しい雰囲気です。
思い思いに選んだ色とりどりの振袖をまとった新成人のハレの日です。
「目立ちたい」・「友達と同じ色は嫌」・「綺麗にいきたい」・「可愛くいきたい」
「かっこ良くいきたい」・「自分に似合う物で」など振袖を選ぶ基準は人それぞれ。
最も意見として多いのは、「人と同じは嫌!」
確かに成人式で、同じ振袖を着ている人がいたらちょっと気まずいですよね。
洋服でも電車の中で、同じ服の人と遭遇してしまったら恥ずかしくて車両を変えたり・・・
なんてありますが、成人式ならなおさらかもしれません。
振袖選びで失敗しないために、是非知っておきたい3つのヒミツをお話ししましょう。
振袖の製造方法で大きく変わってしまう事実とは?
振袖には、様々な製造方法やたくさんの技法がございます。
製造方法は大きく分けて、「職人が手で染めた着物」と「インクジェットで印刷した着物」の2種類に分かれます。
職人が手染めで作る振袖は、国産の生地で染めも産地の染元によって一点ずつの手作業で行うため、一年を通して出来上がる数には限りがあります。
逆にインクジェット(捺染ともいわれます)で印刷するプリント振袖は、国内はもちろん中国やベトナムなど海外で同じものを大量ロットで生産することができます。
製造方法が違うだけで出来上がる量が異なるため、人とかぶる?かぶらない?の可能性が選ぶ振袖で大きく変わってしまいます。
では、どのように見分けるのでしょうか?
職人の高齢化で廃業になったり、流通などの問題が、モノづくりの妨げになって本物の振袖を作る染元が少なくなっています。
そのため市場に出回っている振袖の約半数以上が、プリント振袖といわれています。
例えば、呉服屋で選んだ振袖がプリントの量産品であっても、わざわざプリントですよと説明してくれるお店は、皆無です。
手染めとプリントを差別化するため証紙などで、見分けられるようにする案もあったのですが、京都で作られた全ての着物を京友禅にしようと問屋らが押し切ってしまったことで、実際にはわかりにくくなっているのが現状です。
ですが素人でも、手染めかプリントかを見分ける方法が無い訳ではありません。
1-1 生地が違う
Tシャツなどに使用されているインクジェットの技術を着物に応用したものが、プリント振袖なのですが、そもそもこの機械は厚手の生地が使えず、どうしても薄い生地しか印刷が出来ないため生地が薄っぺらいです。
手染めの振袖は、丹後ちりめんや濱ちりめんなどの紋意匠生地を使用しておりますので、しっかりと張りのある生地を使用しています。
1-2 染が違う
基本的に、インクジェットは生地に印刷して作られるものですので、生地の表面に色が付着されるだけで、裏まで色が通りません。
手描き友禅は生地の裏に色が通りますので、生地の裏側を見て柄の裏が真っ白なのは、インクジェットで作られたプリント振袖ですよということです。
注:但し昨今、技術的な発展もあり裏まで色が通るインクジェット技術もあるので気をつけて下さい。
1-3 本物は値段も正直です
仕事の良し悪しにもよりますが、手描きの振袖がフルセットで50万円以下、型染めの振袖がフルセットで40万以下ということはほとんどありません。
上を見ると何百万とする振袖もありますが、セットで2~30万ぐらいで売られている振袖は、ほぼインクジェットと思って良いでしょう。
匠を頼りに選ぶ
手染めの着物は、どこの染匠で制作された物なのかを袖底の裏側に証紙やハンコ、または右の衿先に落款などでわかるようになっています。
それぞれの染元やメーカーが、品質表示を行っていますので、下記でご紹介する匠の振袖は安心です。
つまり、手染めで着物を制作している染匠の振袖を選べば、プリント振袖では無いという事です。
手染めの振袖というと、100万ぐらいかかるイメージの方も多いようですが、一昔前と比べ流通形態も変わっており、比較的お求めやすい価格で販売していたり、レンタルできたりするお店もありますので、扱っているお店をネットなどで調べる事をおススメします。
手染め・型染め染匠 一覧
久保耕(株) (株)白木染匠 吉川染匠(株) (有)成謙工房謙蔵
染匠市川(株) (株)藤娘きぬたや 丸福染匠
(株)内と良 吉澤織物(株)
(株)桐屋 (株)滝泰
(株)青柳 栗山工房 ※参考にしてみてください。
様々な振袖の種類について
次に振袖の種類についての解説になりますが、ここではそれぞれの振袖の特徴をご紹介させて頂こうと思います。
総刺繍の振袖
柄付けを染めではなく、すべて刺繍によって加工された希少な振袖です。
人の手によって刺繍を施しますので、制作には6カ月から長いものは1年くらいの月日がかかります。
京友禅などの染めの振袖と比べて、刺繍は柄が立体的な光沢感に包まれていて花嫁が着用する色打掛のように豪華絢爛です。
総刺繍振袖は、総絞りの振袖と並び、最高級の振袖に分類され、一際目立つ存在感を演出してくれます。
総絞りの振袖
1粒ずつ生糸でくくっていき、着物1反で約20万個施されるため、熟練の職人でも年単位の時間を要する大変手間のかかった贅沢な逸品です。
「絞り」といっても、「鹿の子絞り」・「疋田絞り」・「一目絞り」・「大帽子絞り」・「小帽子絞り」など色んな技法を使い分けながら制作します。
そうした緻密な計算がされているからこそ、柄の奥行きや気品ある風合いが表現出来るのでしょうね。
総絞りは、絞ることで生地が縮んでおりますので、身長の高い方は着用が難しい振袖になります。
絞りのできる職人の減少などもあり、機械絞りといって絞りの立ち方が浅く山がづれており、絞り風な振袖です。
友禅ものと比べると総絞りは格が下だと言われてはいますが、大変高価で豪華な作品ばかりですので、現在ではあまり気にしなくても着用いただけるのではないでしょうか。
辻が花の振袖
室町時代から江戸時代に降盛して、友禅の技法が確立したのち、急速に姿を消した事から「幻の染物」と称される事があります。
故久保田一竹先生が独自の技法で、現代に再現されました。
複雑な絞りや多色染め分けなど高度な技術を必要とし、「着物にしか咲かない花」といわれ、友禅に比べて生産量は少ないものとなります。
京都でも辻が花は制作されていますが、型染めやインクジェットが多く見受けられ、新潟の十日町で制作されているものは手描きの振袖になります。
草木花が描かれた流れのある小柄の文様ですので、体型を気にせず独特の雰囲気をお試しいただけます。
京友禅の振袖
元禄時代に扇絵師の宮崎友禅斎が考案した染色技法です。
古来より伝統を継承しつつ、多彩な色調と絵画に近い自由な表現ができた事から、人気を博し普及しました。
京都では、それぞれの職人が手を加え制作する、いわゆる分業制のため職人の技量によっても大きく出来上がりが異なってきます。
その職人らをまとめているのが、メーカーや染元でして、それぞれの特色が異なります。
受け継がれた伝統の技にて制作された振袖をまとい、京友禅ならではの品格や可愛さを試されてみてはいかがでしょうか。
加賀友禅の振袖
「加賀五彩」と呼ばれる臙脂・藍・黄土・草・古代紫の五色で構成され、京友禅より落ち着いた色調が特徴です。
金箔や絞り、刺繍など染色以外の技法は使わず、草花模様を中心とした絵画調の作品が多く、「外ぼかし」や「虫食い」は独特な風合いがあります。
加賀友禅は、3つに分類され、一般的に出回っているのは「京加賀」や「新加賀」になります。
加賀染振興協会が認定された作家が制作した「本加賀友禅の振袖」は、石川県内で9割消費されるといわれ、市場にはほとんど出回らないといわれています。
全ての加工が職人の手によって製作されますので、大変高価で希少な振袖となり、上品で落ち着いた雰囲気を出されたい方にはおススメです。
紅型の振袖
沖縄の自然を映し出した伝統の染物です。
自然の色を原材料に手作業から生まれる美しい色合いは、太古から琉球の王家や氏族、諸外国の王家など多くの人々を魅了してきました。
本場の琉球本紅型は手染めのため大変希少で高価なものとなりますが、和染紅型(京紅型)は型染めですので、お求めやすい価格の物が多いです。
華やかな色合いで、個性的な雰囲気のため目立ちたい人には良いかもしれません。
ろうたたきの振袖
溶かした蝋(ろう)を刷毛につけて、棒でたたいて粒状の模様を出していきます。
細かで不規則な斑点が特徴で斑点の大きさをムラのないたたきに作るには高い技術力が必要です。
ろうたたきの振袖はほとんど制作されていないため、高級感ある独特の風合いは目立つでしょう。
まとめ
「職人が手で染めた着物」と「インクジェットで印刷した着物」の違いはご理解いただけましたでしょうか?
また「職人が手で染めた着物」の分類でも手糸目(大変高価)、型糸目(一般的)によっても価格が全く違います。
振袖の種類もいろいろありますので、自分の個性と着物の特徴が合致する振袖を見つける事がポイントです。
人と同じは嫌!という方は、お店に尋ねたり、自分で調べたりして手染めの着物を選びましょう。
単純に自分が選んだ振袖がどこで作られている物なのか、興味を持って調べるてみるのも面白いかもしれませんね。
一生懸命選んだ振袖が失敗しないように、気をつけてください。